現代に生きる知恵! お国変われば善悪逆転? 米国で大繁殖の鯉 SIA評論
現代に生きる知恵!:私の仕事柄、年末年始も休み無しで事務所に出勤しメールへの返信や確認をしている。昨年末は12月31日ギリギリまである新しい音楽用スピーカーの英文キャッチフレーズの決定で苦闘していた。日本の音楽愛好家が好むと思われる表現と英語圏の人々が好むと思われる表現の狭間の格闘と云えるかも知れない。
英語表現についてはネイティブに聞けば解決と思う人がいるが、それは必ずしも正しくない。ネイティブに聞けば即座に解決するのは、初歩的問題や一般に英語圏で使用されているか否かと云った低次元の問題である。
そういった低次元の問題であれば、英語を母国語とするそれなりの教養のある人に聞けば良い。簡単な話である。所がどの人が本当に教養のある人かの判断は意外に難しい。その事について以下説明する。
母国語、日本語で考えれば歴然とする。日本生まれ日本育ちの日本語を母国語とする人は、それぞれに日本語表現に一家言を持っている。それだけにそれぞれの日本語表現について人それぞれに意見は異なる。学歴の高い人が大衆を捉える表現に長けているか? こう考えて行くと、意外な程難しい問題である事が理解戴けると思う。
一つの解決策は専門家を生かす、大衆の知恵である。しかし、大衆が全く無知であればどの専門家を信頼し活用すべきか全く解らないので、実はこれも難しい問題を含んでいる。専門家の間に意見の一致を見ない問題が多いだけでなく、専門家を自称する詐欺師や、専門的知識を利用し自己利益に狂奔する人もいる。大方の社会問題はこういった中で解決策を見出すしかない。無責任な評論家とならず、皆さん自ら努力願いたい。
2011年の東日本大震災後、私の信頼する何人かの知人の言によれば、突如専門家として称して多くの専門外の人物がマスコミを賑わしたと言う。マスコミの無知が招いた悲劇である。自ら判断力を高めるしかない。
所変われば:善悪逆転
今朝、米国時間 1 月 6 日 17 時放映 PBS ニュースでコマーシャル無しで 11 分 45 秒に及 ぶ面白いニュースを見た。米国中西部での鯉の大繁殖による環境破壊、被害、近隣州政府や連邦政府の五大湖侵 入阻止対策を報じている。この問題はかなり以前から度々報道されているが未だに解決されず、中西部諸州間の 裁判沙汰にすらなっている。今回の報道では連邦政府の新たな 8 億ドル(約 9 百億円)のイリノイ州の施設建設 提案も含め、被害状況と対策、更には昨年 11 月の提案は当初予算の 3 倍と報じられているので要約する。
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1960年代米国南部の池や魚養殖場を清潔に保つためアジアから鯉が持ち込まれた。その一部が近辺の川や湖に逃げ出し大繁殖しミシシッピ川を経由し北上を続け、五大湖の一つミシガン湖に50マイル(80キロ)の地点に迄進出し、それを防止するための2021年完成予定の各種設備建設費が2億7千万ドル(約300億円)、運営費が年々1600万ドル(約17億円)。しかも、これまでの各種努力、施策にもかかわらず、2010年にはミシガン湖6マイル(約10キロ)の地点で鯉が捕獲されている。現在北上を続ける鯉には4種あり、その内の最も脅威となっている鯉は繁殖力に優れ、成長も早く100パウンド(4.5キロ)を超える。こういった事態の中、ミシガン州を初めとする5州がイリノイ州にシカゴ運河の閉鎖を求め2009年に訴訟を起こしたが、未だに宙に浮いたままである。
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問題解決を目指し導入され善玉とされた鯉が、悪玉となる。よくある話である。環境に適応し繁殖を続けるその生命力。これに対するのは、その鯉からするとまさに死活問題であるだけに、困難を極める。簡単な解決策は、「食べちゃう事」である。事実、そういった試みもなされているが、中西部に元々鯉を食する習慣が無いため未だ試行錯誤段階に過ぎないようである。
どうも、日本産の鯉とは幾分種が異なる様であるが、これが日本であれば、大いに日本の食卓を賑わすであろうと思いつつ見ていた。しかし、ニュース終了後、魚の消費が急激に減っている日本、ましてや川魚はアユとウナギを除いてはどれだけの人が現在積極的に食するか不安になった。日本の河川に進出した外来魚もアメリカザリガニを含め日本社会で積極的に食されているとは言えない。正月のお屠蘇気分も吹っ飛び、ハタと筆が止まる次第である。(2019年1月7日 佐々木 賢治筆 siabest@sun-inet.or.jp)
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【雑誌オピニオン2019年2月・4月合併号掲載記事】
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