評論

 内容は前号に続いて、政府・規制改革推進会議の「放送事業見直し」についてです。
 さて、私が40年ほど勤務した中京テレビが、来年4月に開局50周年を迎えます。
 その中京テレビから、3年前(2015年9月)50周年史を編纂するにあたって、OBとOGにメッセージ募集のアンケート依頼があり、その中に「後輩にこれだけは言って置きたいこと、伝えておきたいこと」という項目がありました。
 私が記したのは、『中京テレビ(放送局)は、放送法に基づいて、設立が認められている特殊なマス・メディアの会社である。一般大衆を対象にするマス・メディアに新聞、雑誌、インターネットなどがあるが、法律が定められていない。新聞法、雑誌法、インターネット法はない。中京テレビは、特殊な扱いをされている会社なのである。それだけに社会的責任は大きい。放送される番組・コマーシャルの一般大衆に対する責任は非常に重い。放送法をしっかり読んでほしい。放送法に基づいて設けられている放送基準を、しっかり理解してほしい。そのうえで、しっかり仕事をしてほしい。中京テレビは特殊な会社であり、働く者は特殊な人なのだ、と自覚してほしい』という内容です。
 これを記した理由は「放送と通信(インターネット)の融合」をテーマに「放送事業の見直し」について議論する時が来ると予想していたからで、特に、民放テレビ局が報道番組・情報番組などで議論の場を国民(視聴者)に提供してほしい、日本テレビ・読売テレビ系列の基幹局・中京テレビが率先して提供してほしいと思っていたからです。
 そして、その時が来て、私は民放テレビ局がどのような反応をするか、興味を持って見ていましたが、東京局発・大阪局発のネット番組と中京テレビのローカル番組を見た限りですが、意図的と感じられるほどに、議論をスルーしていたのが、率直に言って、違和感を抱くというよりも、面白い、と感じました。
 私は前号で、
 『テレビ局の目的は、放送を通じて、文化の発展、公共の福祉、産業と経済の繁栄に役立ち、平和な世界の実現に寄与し、人類の幸福に貢献することである』
 『国民はテレビ局に、電波を貸して商売をさせているのであって、テレビ局が国民の公共の利益に、どういうふうに資しているか、を、第一義に考えて、注視しなければならないのであるが、このたびの政府の放送事業の見直しの議論も関心を示すべきである』と記しましたが、テレビ局が議論をスルーしてしまえば、残念ながら国民は関心を示しようがないのです。
 国民から電波を借りて放送を通じて商売をさせてもらっているテレビ局は、政府の規制改革推進会議が、放送法改正による放送事業の抜本的な見直し案を検討している時、何故、見直し案を大体的に報道しなかったのか。まるでそんな報道が無かったかのように議論すらしなかったのか。国民に意識を集中させないように報道の知る権利を制限していたのか。いろんな見方もできると思います。次号で深掘りしようと思います。
投稿者:杉浦定行 【オピニオン2018年8月号掲載】
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【杉浦定行プロフィール】
1975年日本大学芸術学部放送学科卒業、同年中京テレビ放送株式会社入社。
TVマンの前半20年ほど、警察、司法、行政、経済、スポーツなどマス・メディアの記者クラブに所属して取材経験を積みながら、情報・スポーツ番組のディレクター、プロデューサーとして報道取材・番組制作の現場部門の業務に従事。
TVマンの後半の20年ほどは、主に管理部門の業務に従事。広告代理店、スポンサー対応の営業部門を経験した後、番組審議・CM考査(マスコミ倫理懇談会全国協議会会員、JARO・日本広告審査機構会員)個人情報監理などコンプライアンス部門の業務に従事。
アナログ放送からデジタル放送への変換時期には、放送監視部門の業務にも従事。
64歳(2014年)夏の終わりに、離職。
独居でペットの老犬と一緒に暮らす高齢の実母と、遠く離れて一人で生活する高齢の義母の二人の母を見守る生活移行へと、踏ん切りをつける。
現在、経験を活かして「視聴者目線のテレビ放送」「地域における介護と医療」「行政と住民自治の在り方」をテーマにして、ジャーナリストとして、取材・調査・研究・考察の活動を続けている。
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