作曲・編曲家 馬飼野俊一氏|まかいのしゅんいち
「てんとう虫のサンバ」という歌を皆さん、ご存知だろうか。1973年(昭和48年)発売のチェリッシュの大ヒット曲で、団塊の世代なら誰もが知っている昭和時代のミリオンセラー曲である。連日連夜テレビ、ラジオで、この曲が日本列島を駆け巡った。
この大ヒット曲を手がけた作曲者が馬飼野俊一氏。
馬飼野俊一氏は1946年に愛知県豊橋市に生まれ、1965年に上京し、1967年に「あなたのすべてを」の編曲で歌謡界デビュー。
1970年の大阪万博の年、24才の若さで「笑って許して(和田アキ子)」の編曲を手がけ、第12回日本レコード大賞・編曲賞を受賞(最年少記録)。
今日までに作曲をはじめ主に編曲家として、「石狩挽歌(北原ミレイ)」「さそり座の女(美川憲一)」「北酒場(細川たかし)」「襟裳岬(森進一)」「ひなげしの花(アグネス・チャン)」など、1万2千曲を超える作品を手がけてきた。1曲を書き終えるのに、新品の鉛筆が丸々1本なくなるので、それを縦に積み重ねていくと、なんと東京タワーの7倍ほどになるというから驚きである。
常に前向きで「これまでになかったもの」を目指して取り組んできている。例えば、細川たかしの代表曲「北酒場」の編曲を依頼されたときは、これまでの暗い演歌にしないで、軽快なリズムで若い人にも歌える演歌を目指したいと五線譜にペンを走らせた。その結果、カラッと明るくて軽快な歌が誕生した。この歌は人々に瞬く間に支持されて大ヒット曲となった。
そんな馬飼野俊一氏は、今から10年前にひょんなキッカケでジャンルもキャリアも年齢も異なる 音楽仲間2人と好きな蕎麦(そば)を食べに行った。蕎麦を食べながら、色々な話に花が咲き、先輩の体験談は後輩を勇気づけ、後輩の話は先輩に元気を与える、お互いが良い影響を与えあうと知った。このような機会を3人だけにしておくのはもったいないと思い、手近な知り合いや友人に声を掛け、「そば会」と称してこ の集まりを続けることにした。
回を重ねる毎に徐々に参加人数が増え、20 人ほどの集まりになった頃に名称を正式に「蕎麦の会 かも南の山馬」 と改め、2018年12月5日までの11年間で34回実施。「好物のお蕎麦を食べながら、ジャ ンルやキャリア、世代を超えて語り合い、楽しく過ごしましょう」という基本姿勢は今もこれからも変らない。
馬飼野俊一氏は、今年73才を迎えるが、24才のときと変わらないバイタリティーがある。「これまでになかったもの」を念頭に、最近では2019年1月30日に発売した市川由紀乃の新曲「雪恋華」の編曲を手がけた。二胡演奏が奏でられていて、ドラマチックで奥深くヒットの予感を感じさせる楽曲に仕上がっている。またNHK紅白歌合戦に常連出場している山内惠介の「さらせ冬の嵐」の編曲も手がけ、第33回「藤田まさと賞」を受賞(2019年1月25日 海運クラブにて授賞式)。2019年3月6日には山内惠介の新曲「唇スカーレット」が発売されるが、この楽曲の編曲も手がけた。
音楽人生50年を超えた現在もなお命ある限り、チャレンジャーとして日本の音楽業界に熱い息吹を吹き込んでいる。
取材:シンガープロ 安藤秀樹
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オピニオンだより
投稿:2019年1月29日