世界陸上8日目 熱戦と感動の予選・決勝ハイライト 2025年9月20日
田中希実選手の心打たれる言葉
男子4×100mリレー予選2組で、日本は3位で決勝進出を決めた。1走から2走へのバトンパスに若干の詰まりが見られたが、3走から4走への区間では一時トップに立ったように見えた。3走の桐生祥秀選手からバトンを受け取ったアンカーの鵜澤飛羽選手は、追い上げるオーストラリアの選手を振り切り、3位でフィニッシュした。
レース後、インタビューに応じた小池祐貴選手は「鳥肌が立った。大歓声に包まれてとても楽しかった」と語り、決勝に向けて「雰囲気に乗って思い切り走るだけです。」、そしてメンバーに向けて「仲良くやりましょう!」と力強く述べた。その言葉は素直で、大変清々しいものだった。
男子4×400mリレーの予選は、大波乱の展開となった。1組では、優勝候補のアメリカが痛恨のバトンミスにより6位で予選敗退となった。しかし、アメリカのアンカー、マクキバー選手の追い上げは見事だった。
予選2組に出場した日本は6位で、残念ながら予選敗退となった。
波乱のリレーを観戦して、バトンゾーンにおいて、混戦の中をスムーズにバトンを受け渡すことがいかに難しいかを改めて認識した。
女子、男子ともに、リレーは予選といえども決勝進出のために体力温存を図ることは難しいと感じた。全てのチームが全速力で走っていたように見えた。男子4×400mリレー予選では、ボツワナが今季自国最高記録をマークし、女子4×400mリレー予選では、ジャマイカとアメリカが今季世界最高記録を樹立した。また、男子4×100mリレー予選では、カナダが今季自国最高記録、ガーナが国内新記録を、女子4×100mリレー予選では、ジャマイカが国内新記録、アメリカが今季世界最高記録をマークした。
女子5000m決勝では、田中希実選手が15分07秒34で12位でゴールした。驚異の13分58秒06の世界記録を持つチェベト選手が、ラスト100mでキピエゴン選手との大接戦を制して優勝。レースは序盤から超スローペースの展開となり、ラスト1周での勝負となった。1位から3位の選手が14分55秒でゴールインしたシーンは、大変見応えがあった。
田中希実選手がレース後にインタビューに応えて語った下記の言葉に心が打たれた。
世界陸上に多くの皆さんにご来場いただき、大変貴重な経験になりました。皆さんの温かい声援と会場の熱気は、一生忘れません。
東京オリンピックでは無観客開催であったこともあり、多くの方々に応援されているという実感が湧かないまま4年間を過ごしてきました。大変心細い思いをしていましたが、今回の世界陸上において、多くの方々が陸上競技と選手たちを愛して下さっていることを実感し、大変嬉しく思います。
この4年間、日本選手たちは皆、苦しい時期を過ごしてきたと思います。世界陸上に出場できた選手、出場できなかった選手、報われた選手、報われなかった選手、それぞれの選手が、かけがえのない時間を過ごしたと思います。本当にありがとうございました。
男子800m決勝は、最初の200mを23秒、400mを49秒で通過した。これはまるで短距離走のスピードであり、驚くべきものだ。世界記録を上回ってきたということで、興味を大いにそそられた。最後の直線、ホームストレートでは5選手が接戦で駆け抜け、1位、2位、3位がほぼ同タイム、そのすぐ後ろにわずか1m以内に3選手が接戦していた。稀に見るこの激闘に大変感激した。
優勝はワニョイ選手で1分41秒86の大会新記録、2位はセジャティ選手で1分41秒90、3位はアロップ選手で1分41秒95だった。
なお、スペシャルアンバサダーの織田裕二が蒸し暑いと語っていたので、会場は随分蒸し暑かったようである。「田中希実選手は、責任感の強い子なので、彼女がレース前に見せた笑顔が嬉しかった。走りを楽しんで、走りが大好きと思わせる田中希実のレースを見たいですね。」と語っていた言葉も印象に残った。
投稿:2025年9月21日
安藤秀樹