スポーツ

2005年6月4日、日本選手権の観戦に出かけました。
開催地の国立競技場へ来たのは久しぶりでしたが、なんとなく競技場が小さく見えたのは気のせいでしょうか。
1964年に、ここで東京オリンピックが開催されていたことを思うと感無量です。


さて、大会種目の中でも私は自分が勤務している「びわじま整形外科」で治療を受けているTさんが出場する男子100mに最も関心がありました。
彼は100mを10秒33のベスト記録を持つ選手ですが、現在両アキレス腱に炎症があって、歩くだけでも痛みがあるので、とても走れる状況ではありませんでした。
それでも彼は日本選手権に出場するとおっしゃっていたので、どんな走りをするのか興味津々でした。
医学的には、完治してからレースに出場するのが望ましいと思いますが、間近に迫った試合に完治を待つ時間的余裕はありませんでした。

以下100m予選の私なりの実況です。

いよいよ彼の出場する男子100m予選1組。
土江選手が2レーン、彼は5レーン。

私は土江選手にも興味がありましたが、ケガを押してまで出場しているTさんの走りにもっとも関心がありました。

スタート前の研ぎ澄まれた彼の表情。
「よーい」でさらに緊張が高まる。
すべての時間が一瞬止まったかのように感じた次の瞬間、「ド〜ン」と号砲が鳴った!
スタートラインから7人の選手が一斉に飛び出した!
その中でもTさんのスタートダッシュはひときわ迫力があった。

50m、60m、80m・・・
彼は走り続けている。
そしてゴールを駆け抜けた。
3着!
タイムは10秒57。
土江選手は1着で10秒43。
彼の走りは鮮やかであった。
一体誰が、彼がアキレス腱炎で苦しんでいると思うだろう。

一昔前、巨人の吉村選手が膝の靱帯を3本断裂するという大ケガをしました。
医療関係者の誰もが、「プロスポーツ界の復帰は不可能だ」と語っていました。
しかし彼は医学の常識を越えて見事にカムバックを果たしました。
医療関係者は「代走可能な野球だったから復帰できた。サッカーだったら復帰はできなかったであろう」とまことしやかに弁解しました。
それは一理あるかも知れませんが、カムバックは何よりも吉村選手の復帰を諦めない不屈の精神の賜物ではなかったかと思います。

実業団ハンドボールの試合を観戦に行ったことがあります。そこで信じられない光景を目の当たりにしました。
膝の靱帯が断裂していて、なおかつ膝蓋骨の大腿軟骨がクレーターのようにえぐり取られていた選手が試合で大活躍していました。
類い希な俊敏な動きに豪快なシュート。
一体誰が、彼が膝を患って苦しんでいることを知るでしょう。

スポーツには、ケガの痛みを凌駕する魔物が潜んでいるようです。

相撲の貴乃花が膝の痛みに耐えて武蔵丸を土俵に沈めて優勝したことがあります。
小泉首相が「痛みに耐えてよく頑張った。感動した。おめでとう。」と自ら総理大臣賞を手渡したあの試合です。
貴乃花の気迫に満ちた相撲に多くの人々が感動しました。

Tさんは、日本選手権で準決勝に進出しましたが、決勝には残れませんでした。
それでもケガをかかえての出場であったことを思えば、奇跡に近い結果を残せたように思います。

男子100m予選1組・動画

投稿:2005年6月4日


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