食品消費税1%は誰のための減税か?
今年2月の衆院選で自民党が掲げた公約の文言は「検討を加速する」というものであり、「消費税をゼロにする」という確定的な公約ではなかった。しかし高市首相は「公約を守る」と宣言したため、あたかも確定事項であったかのように受け止められてしまっている。
高市首相が「それは私の悲願」と発言していることを踏まえれば、政治生命をかけて自らの実績としてやり遂げるという強い意志を感じる。歴代総理の誰も成し遂げられなかったことを実現し、国民から拍手喝采を浴びる総理大臣になりたいのではないだろうか。
「食料品の消費税率は0%にすべき」という当初の方針は、「レジ改修に1年以上かかる」と判明したことを受けて修正され、税率を1%に抑えた上で給付を組み合わせることで、家計の実質的な負担を「0%と同等」にする形となった。あくまで「実質0%」にこだわる姿勢がうかがえる。消費税減税は、あくまで「給付付き税額控除」が軌道に乗るまでのつなぎ措置という位置づけである。
とはいえ、日々の物価高に苦しむ消費者にとって、一時的であれ負担が軽減されることはありがたいに違いない。しかしその一方で、外食産業や農業、漁業にとっては大きな痛手となる。
現在でも物価高によって倒産する飲食店が少なからずある中、今回の減税はさらなる追い打ちをかけかねない。政府はこれらの産業に対する救済策を手厚く講じる必要があるが、それには相当な労力と時間を要することは容易に想像できる。
高市首相は消費税の重要性を認識しているからこそ、減税期間を「2年間」に限定しているのだろう。2年間であれば財政的になんとか切り抜けることができるという試算である以上、何が何でも2年後には元の税率に戻さなければならない。
もし2年後に国民の所得が増え、物価が落ち着いていれば、8%への再引き上げも受け入れられるかもしれない。だが、そうでなかった場合はかなりの反発を招くだろう。
私は基本的に、根幹となる税制や社会システムを安易に変更すべきではないと考える。「給付付き税額控除」が軌道に乗るまでのつなぎであるならば、現金給付で乗り切る方が得策ではないか。そうすれば、外食産業や農業、漁業への悪影響を考慮せずに済むからだ。
今回の消費税減税には、「公約を守るリーダー」として国民の信頼を高め、長期政権へつなげようとする意図が感じられる。
国の将来を見据えた判断というよりも、首相個人の人気取りを優先した政策ではないかと思えてならない。
今優先すべきは消費税の減税ではなく、円安を抑え、物価高を鎮静化させる政策にエネルギーを注ぐことではないだろうか。
投稿:2026年8月20日
シンガープロ 安藤秀樹

