スポ研ナースセンターだより


1.はじめに
 陸上・三段跳の日本トップレベルである選手が試合中に左アキレス腱を断裂し、当所で左アキレス腱縫合手術を受けた。手術9ヶ月後に試合復帰を果たしたが、手術2年8ヶ月後に今度は右アキレス腱を断裂した。再度当所で右アキレス腱縫合手術を受けた。以下に当所入院中の経過および退院後の経過について報告する。

2.患者紹介


患 者:22才 男性
スポーツ種目:陸上競技 三段跳
スポーツレベル:B(当所ナースセンター判定基準による)
スポーツ歴:中学1年〜高校1年 バスケット 高校2年〜 陸上競技
競技成績歴:高校3年 インターハイ優勝
      公認記録 15m73  ベスト記録:16m03
性 格:話し好き おおざっぱ 神経質
身 長:176センチ 体 重:70キロ
利き手:右   踏切足:左   キック足:右

3.受傷機転
<左アキレス腱断裂の場合>
 7月 全日本ジュニア5回目のホップの時、踏切板が雨で濡れていたために滑って転倒して受傷。痛みもなく歩行できたが、踵が高くなった感じがあった。断裂音は特になかった。
(試合までの経緯)
 6月 ジャンプトレーニングでアキレス腱に痛みがあった。
 大会前日 クーラーで体が冷える。アキレス腱に堅い感じがあった。
 試合当日 調子は良かったが、2〜3本目からアキレス腱に痛みがでてきた。

<右アキレス腱断裂の場合>
 3月 ハードルを跳び越えて着地した時に、パコンと音鳴がして受傷。

4.入院までの経過
<左アキレス腱断裂の場合>
 受傷当日、近医にて湿布処置。
 オリンピック理事の紹介で7月3日当所受診。
 即日手術にて入院となる。

<右アキレス腱断裂の場合>
 受傷当日応急処置したのち、当所に電話連絡。
 主治医より明日受診するように言われ、3月5日当所受診。
 即日手術にて入院となる。

5.入院中の経過
    -省略 -
6.退院後の経過
    -省略 -

7.おわりに
 患者は左アキレス腱を断裂する前は、あと30センチ記録を更新できればオリンピックに行けると夢をいだいていた。しかしケガをして、元通り治るのか、復帰はできるかが心配の種になった。

 手術後1年9ヶ月後に14m57cmを跳躍したが、高校3年にインターハイで優勝した記録には遠く及ばなかった。もともと素質のある選手で十分な練習をしなくても15mを軽くジャンプしていたので、アキレス腱断裂はやはり大きな痛手であった。

 2年8ヶ月後に右アキレス腱を断裂した時には気持ちを切りかえた。さっぱりした性格で、オリンピックの夢はきっぱり断念。国体にでも出場できれば、それだけで幸せだと語った。

 将来オリンピックで活躍できるかもしれない天性を秘めた選手であっても、ケガでその芽が摘まれるのは本当に悲しいことである。


<以上は、1992年7月号のナースセンターだよりから抜粋>

 この年バルセロナオリンピックがありました。

柔道で古賀選手が金メダル、女子200m平泳ぎで史上最年少(14才)で岩崎選手が金メダル、女子陸上マラソンで有森選手が64年ぶりに銀メダルを獲得して大きな話題を呼びました。

(財)スポーツ医・科学研究所
ナースセンターだより1992年7月
診療部 主任看護師 安藤秀樹

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