スポ研ナースセンターだより


● ある日の外来診察時のことです。緊急手術を要する選手が現れました。
しかし、すでに手術予定が一杯で、彼の手術を行うためには、既に2件の手術がある日に、彼の手術を入れなければいけません。
そうすると私たちは、1日に3件の手術を覚悟しなければなりません。しかしその日の外来予約が一杯で、しかもその日の看護婦はひとりお休みでした。
『業務遂行は困難』と思ったので、 『何がなんでも予定していた手術のうちの1件を移動しよう』と心に決めました。
さっそくKさん(2件ある手術のうちのひとり)のご自宅に電話しました。
ご両親が出られて「すでに手術がその日にあるということで予定を組んでおりますので困ります」というご返事でした。もっともなことです。
しかし私は諦めません。 Kさんのご両親に「緊急の手術が入りましたので、どうしてもKさんの手術をすることができなくなりました。誠に申し訳ございませんが、手術日の変更をお願い致します」と再三お願いして、やっとのことでお許しをいただきました。
そして緊急手術を要する選手の手術が無事に終わって、いよいよKさんの入院日がやってきました。
その日はあいにく病室が満床だったので、Kさんには、やむを得ず個室に入っていただきました。
Kさんのご両親は、予定されていた手術日が変更された上に「個室料金まで請求されるとはどういうことか」と納得できない様子でした。
「2日後に退院する患者がいますので、その日に必ず二人部屋に移動しますから」 とお話して納得していただきました。
その翌日のことです。 また緊急入院を要する選手が現れました。
すでに病室は満床でした。
『さあ困った、困った。一体どうすれば良いのか』と相当悩みました。
仕方がありません。 誰かに退院していただこう!
翌日に退院予定のQさんに、理由をお話して 「1日繰り上げになりますが、今日、退院をお願い致します」と無理を承知の上で、退院していただきました。
しかし別の困った問題が生じました。 前日に、Qさんの退院後に病室がひとつ空くのをあてにしてお許しいただいたKさんのご両親との間の約束が守れなくなったからです。
『さあ困った、困った。いっそうのこと個室料金を特別に無料にするか』と考えました。
しかし、そんな心配もよそに退院患者が新たに現れたので無事 事無きを得ました。
病室が満床の場合、 このように個室と二人部屋を上手に工面するのは、なかなか大変です。

● 今月、当所にラグビー選手がふたり、椎間板ヘルニアで入院してきました。
2人とも現在の治療は、牽引と薬による保存療法です。
ひとりの選手は、数メートルも歩くと、左殿部と左下肢に痛みが出現して立っていられなくなります。
それで、ベッド上で洗髪と全身清拭、足浴を看護婦が行っています。
寝たきりの状態が続くと、筋肉が萎縮するので、リハビリの先生が、寝た状態でもできるトレーニングを考案し、毎夕病室を訪れて高周波治療を行っています。
1日も早く良くなってスポーツに復帰して欲しいと願います。
それにしても椎間板ヘルニアとは、本当につらい疾患です。

スポーツ医・科学研究所
ナースセンターだより1996年10月
診療部 主任看護士 安藤秀樹

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