編集後記 1993年1月
● 当所で2年前に前十字靱帯の再建手術を受けたバスケットボールの選手が、同靱帯を再断裂したということで当所に入院してきました。関節鏡検査の結果、内側半月板損傷で同靱帯は幸いにも再断裂していませんでした。「切れていませんように」とお守りを手に持って手術室に入ってきた彼女の顔が忘れられません。
● 外来に訪れる患者さんで思ったことですが、前十字靱帯損傷の選手が多いという事実です。どうしてこんなにも多いのか不思議です。選手は医師から「重症な傷病だ」と説明されても、はじめはピンとこないようです。「スポーツを続けたいのであったら手術が必要」と説明されて、はじめて怪我の症状の重いことを認識するようです。
● 交通事故で入院してきた競輪の選手がいます。靱帯を損傷していたり、骨折していたりとかなりきびしい状況にありますが、ご本人はスポーツ復帰に向けて意欲満々です。
● 足底筋膜炎の女性選手が、痛み止めの薬を使いながら試合にでています。「試合が終わったら手術」という話でしたが、比較的調子良くプレイできたので、ご本人は「手術をやめて欲しい」ということでとりやめになりました。ところが2,3日して、今度は「手術して欲しい」というようなことを言ってきました。彼女自身、手術するか否か、なかなか決心がつかないようです。主治医は、夕方遅くまで彼女の話を聞き、苦労しておられます。
● ごく稀ですが、感染症の選手に出会うことがあります。この場合、手術は、執刀医が血液で感染しますので、手袋を2枚はめるなど細心の注意をはらって行われます。手術後、手術室は特殊な消毒剤を用いて清掃します。感染症の選手の場合、血液の汚染以外は全く問題ありませんので、普通の選手と同じように対応しています。
旧 (財)スポーツ医・科学研究所
ナースセンターだより1993年1月
元 診療部 主任看護師 安藤秀樹
ナースセンターだより
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