スポ研ナースセンターだより


● ある高校生の野球選手が入院しています。 彼は膝が悪くて入院してきました。 膝の関節鏡検査を行ったところ、大腿脛骨外側軟骨の損傷でした。この状態の膝は、現代医学では治らないということでした。主治医より「野球を続けることは困難である」と彼に話がありました。ところが、 彼は「校内3番手で野球をしてきた自分が野球を続けられなくなることは信じられない」と受け止めることができません。「頑張ればできるんだ」と希望をいだいています。小学生の頃から野球一筋に、甲子園出場を夢見、 プロ野球の選手になることを夢見、そしてその夢を実現するために高校は野球の特待生として入学。「僕から野球を奪ったら何も残らない」と彼はポツリと話をしてくれました。彼を応援したい気持ちもあります。だけど、現実をはっきり認識していただくことも必要ではないかとも思います。彼の葛藤はしばらく続きそうです。

●ある競輪の選手が、試合中に転倒して、肩鎖関節を脱臼して当所に入院し、肩鎖関節脱臼整復固定術を受けました。しかし 手術後、レントゲンを撮ってみると、キルシュナー(固定するための針金)の位置がわずかにずれていました。早期にスポーツ復帰を図る選手でなければ、肩鎖関節の整復位置は見事なほど良好な位置にありましたので、そのままにしておいても全く支障ありません。ところが、 早期にスポーツ復帰を図るこの選手の場合は、 再手術にてキルシュナーを刺入し直した方が良いという結論がでました。悩んだのは執刀された医師です。けっして医師が悪いのではありません。先生はいつも患者さんのためと思って心を尽くして手術されるのです。いつもご自身を患者さんに置き換えて、もし患者さんに痛みがあれば、 まるで自分ごとのように処置されます。どうして医師がこんなにも苦しまなければいけないのか。この選手は再手術により、キルシュナーの位置が完璧な位置に固定し直されました。 執刀医は再手術が終わってやっとの思いで安堵されました。 医師はつくづく大変な職業だと思います。

● 「この1年間に何をどこまで行うのか」、自分の目標を記入して貰った看護婦の自己申告書をチェックしていましたら、一人一人の看護婦が仕事に対して意欲の高いことがはっきりわかりました。ある看護婦は、「雑誌に当所の看護体験を投稿して一般にも広く当研究所の看護を知ってもらいたい。」とありました。仕事への情熱がひしひしと伝わってくる思いがしました。 他にも入院案内の英語版の作成、栄養相談業務のさらなる充実をめざして、分裂種子骨用の履物などの工夫、 看護業務の見直し、疾患別看護計画の作成などがありました。 看護婦が自ら与えた課題に積極的に取り組んでいることは、本当に良いことです。

● 消灯が過ぎて、女性選手と男性選手数名が、 ある病室で夜明け近くまで話こんでいたことがありました。 看護婦の巡室で発覚し、注意したところ、深く反省したようです。時々入院規則が守られないことがあります。

旧 (財)スポーツ医・科学研究所
ナースセンターだより1994年4月
元 診療部 主任看護師 安藤秀樹

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