スポ研ナースセンターだより

1. はじめに


当所で足底筋膜炎の手術を受けた長距離走選手の入院中および退院後の経過について報告します。

2. 足底筋膜炎について

長距離走などのオーバー・ユース、 足の形の異常、 下腿三頭筋やアキレス腱の柔軟性の低下、シューズの不備などから、踵骨から前足部へ足底部に扇状に広がる筋膜に炎症を起こしたものをいう。 症状としては、 足底部に圧痛・運動痛がある。 治療としては、安静、足底筋膜、ふくらはぎのストレッチ、足首の筋力トレーニング、足の形 動きに異常があれば、アーチサポート、 足底板を使用する。 場合によっては、ステロイド剤局注を行う。
保存療法でよくならない場合などに手術適応となる。

3.手術について

足底筋膜を踵骨起始部で幅1cmにわたり切除する(皮切は足底と足背移行部に約5cm 横切)。


4. 患者紹介

患者:○○ 28歳 男性
スポーツ種目:陸上(長距離走)
スポーツレベル:C (当所ナースセンター判定基準による)
スポーツ歴:中学時代から現在に至るまで陸上長距離走
競技成績歴:5000m 14'27" 10000m 29' 38"
ハーフ 1º03'55" 30km 1°35' 30" マラソン 2° 20' 20"
性格:几帳面
身長:170cm
体重:52.7kg

5. 受傷機転と当所入院までの経過

平成2年3月中旬頃から、 左足底部に疼痛出現。
平成2年7月会社の病院受診。 足底筋膜炎と診断される。 保存療法をうける。 8月には、ステロイド局注。合計8回うける。
針治療も行うが、 症状は改善しなかった。
平成3年2月当所受診。 足底筋膜炎と診断される。
以後当所にリハビリ通院する。
平成4年5月25日、手術目的にて入院となる。

6.入院中の経過


7.入院中のリハビリ概略


8.参考症例(当所にて足底腱膜切離術を受けた選手より)



10. 考察

足底筋膜炎の手術は、踵骨起始部で足底筋膜を切離するといった比較的簡単にすむ手術である。
手術後の経過は、術後3カ月までは、踵部にピリピリした感じ、つっぱり感がある。その後症状は消失し、術後4〜5ヵ月目でスポーツ復帰している。 アンケートから、3例の長距離走選手は完治していることがわかった。
入院中の問題は、踵部に圧痛、しびれ、つっぱり感”といった症状が続くので、選手自身が、『本当に治るのだろうか」と心配することである。 医療サイドでは、「良くなるから」と話をして、安心させることが必要であろう。
足底筋膜炎は保存療法でも治癒する。
しかし、すっきり症状がとれるのは、治療を始めてから、半年先になる。
場合によっては、 完治しないケースもある。
『治るのか治らないのか』 と落ち着かない日々を過ごす場合、 あるいは、早くスポーツ復帰を果たしたい場合は、思い切って手術した方が結果的には、良いようである。

スポーツ医・科学研究所
ナースセンターだより1993年7月
診療部 主任看護士 安藤秀樹

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