編集後記 1993年8月
● 今月は、1日に3件の手術が4回ありました。 1ヵ月の手術件数では、 27件と過去最高でした。
● 8月は、 学生さんの夏休みの影響があって、 病室はほとんど満床の状態でした。 次ぎから次ぎへと入院してくる選手のために、普通だったら、 術後7週目に退院のところを、 術後5週目で退院していただくようなことがありました。
● 今月は、全員手術目的のために入院した選手ばかりでした。 リハビリ目的のために入院した選手が一人もいなかったのは、珍しいことでした。
● アキレス腱を断裂して、 急遽手術目的のために入院の運びとなった選手がいました。たまたま他の選手の手術がキャンセルになっていたので、すぐ入院することができました。 「運が良かったね」とご本人にお話したところ、「ケガをしてちっとも運は良くなかった。 最近は運の悪いことばかりですよ」 と返答されました。 人によって随分視点は、違うものだと思いました。
● 手術する前にかなり太っていたK選手は、入院中、 やせることができました。 リハビリがきつくて泣きべそをかくんじゃないかと心配していましたが、 なんとか乗りきったようです。 元気に退院してゆかれて安心しました。
● 理学療法士の先生方は、 頑張っておられます。 勤務時間外だというのに夕方遅くまで入院選手につきっきりで、 膝の伸びの悪い選手には、膝の伸びを良くするためのトレーニングを、 またゴムチューブトレーニングで膝に痛みの生じた選手には、最小限に痛みをおさえるためのトレーニングをそれぞれ指導されていました。 選手との絆がいっそう深まるような印象を受けました。 基本的にはこのような姿勢が大切だと思います。
● 韓国のバスケット選手であるジャン君は、 日本語が上手になりました。 面会室で、他の選手といっしょにテレビを見ていたときのことでした。 皆が、 テレビのあるシーンに、「すごい!」と声を発したら、 ジャン君もまた、 「すごい!」と声を発しました。 これを見ていたある看護婦もまた、「すごい!」と声を発しました。「『すごい』という言葉が自然に言えるになったジャン君、日本語がとっても上手になった」 と驚いたのです。
● 柔道の体育授業で左膝の前十字靭帯を損傷し、さらに1週間後に反対側の膝の前十字靭帯を損傷した選手がいました。 1週間の間に両膝の前十字靭帯を損傷した選手は珍しいことです。 関節鏡で診たところでは、 前十字靭帯の通っている顆間部のノッチが狭くて損傷しやすいタイプだったようです。 スポーツ医・科学研究所5周年セミナーでエリクソン教授が、 前十字靭帯損傷の予防として、 損傷する以前に、 関節鏡視下にノッチプラスティーを行うことは有効な手立てであるとおっしゃっていました。 彼の場合も、ノッチプラスティーを行っていたら、両膝とも前十字靭帯を損傷することはなかったのかも知れません。
旧 (財)スポーツ医・科学研究所
ナースセンターだより1993年8月
元 診療部 主任看護師 安藤秀樹
ナースセンターだより
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