スポ研ナースセンターだより


● 韓国人の選手が前十字靭帯再建手術を受けるために当所に入院しましたが、韓国語しか話せないので、コミュニケーションが十分とれません。 看護婦は韓国語の会話の本などを買ってきたり、ハングル文字で案内を書いた紙を患者のロッカーに貼るなどの工夫をして、なんとかコミュニケーションをとろうと一生懸命です。
他の入院患者は、韓国人であるその患者さんに「友達になろう」 と暖かい手を熱心に差しのべています。

● 手術室で硬膜外麻酔を受けた患者が、キシロカイン薬液注入直後、 発語異常、 口腔浸出液多量、胸部苦悶状態、異常体動が発生しました。 すぐ気管内挿管、酸素投与、ステロイド投与などの処置を施しました。 幸いにも体の状態は次第に落ち着いてゆきました。 手術室で医療者の人数もいて、無事に対処できましたが、これが、もし外来での出来事だったとしたらと考えると怖いです。1年程前にも 全身麻酔で喉頭浮腫が発生し、 危険な状態になった患者がいました。 1回で気管内挿管できたので良かったものの、もし1回で挿管できていなかったとしたらと考えると、ぞっとします。 医療現場は、 常に危険と背中合わせにあります。 この先5年、10年、 何が起こるかわかりません。 医師は、常にこうしたストレスをかかえて、 仕事をしていかなければなりません。

● バドミントンの選手が、 前十字靭帯が切れているということで、手術を受けました。 ところが、手術したところでは、 前十字靭帯は切れていませんでした。 本人は、 前十字靭帯の再建手術と覚悟していただけに、思わぬ幸運に大喜びです。 こんなこともあるのですね。

● ある患者の話を聞いていて、 “おや” と思ったことがあります。 保険の関係で6ヵ月ほど入院させてほしいとの依頼でしたが、 主治医から、 「あと1ヵ月半で退院」 と言われたとのことで、 「A患者はそれほどたいしたこともないのに入院させておいて、B患者は退院してもおかしくないのに、ずっと入院させているので不公平ではありませんか?」と怪訝な面持ちで話をしてきたことです。 けっして特定の患者を優遇しているわけではないのですが、そういうふうに捉えてしまうものなのかと思いました。

●「医師は大変だ!」と思うことがあります。 昼にまたがる長時間の手術が終わると、 昼の休憩もそこそこで切り上げ、 すぐに外来診察。 それが終わると、入院患者の診察と処置。さらに夕方には手術した患者の部屋を訪室し、出血などがあれば、ガーゼ交換などの処置 。ほとんど1日中休みなく仕事しています。 こんな時は、 本当にお疲れさまです。

旧 (財)スポーツ医・科学研究所
ナースセンターだより1993年2月
元 診療部 主任看護師 安藤秀樹

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