スポ研ナースセンターだより


● 43歳の競輪選手が、本年1月27日にレース中に落車して肩鎖関節を脱臼し、岐阜県の某市民病院で手術を受けて、今月7日に当研究所にリハビリ入院してきました。
この競輪選手は、若い頃、観客席から「もっと速く走らんか!」 、「何やっとる!」とたくさんのヤジが飛んだり、罵声を浴びせられたりしたそうです。
ヤジや罵声を浴びるたびに、「うるさい!」と心の中で反発していたそうです。
ところが、「最近はめっきりヤジや罵声が少なくなってしまって、かえって寂しくなりました。お客様が自分に期待をかけて下さったからこそヤジや罵声があったんです。今やっとこの年になってそのありがたさがわかるようになりました」と語ってくれました。
そんな悲嘆に暮れていた彼でしたが、 朗報があります。
それは、当研究所に毎週金曜日の午後に診察に訪れている歯科医師の中村昭二先生の診察を受けたことです。
中村先生は、歯の噛み合わせとスポーツ選手の運動能力の関係について研究していらっしゃる歯科医師です。
彼は、先生から「歯の噛み合わせを正しく矯正すれば、競技能力が現在より2割アップします。10年前の競技能力を呼び戻して差し上げましょう」と言われたそうです。
彼はそれを聞いてお喜びでした。 藁をもつかむ気持ちになりました。
診察を終えてからナースセンターに帰ってきた彼は、もうルンルンで「私は、10年若返るからね」と声高らかに話してくれました。
よほど嬉しかったのでしょうね。
彼が、歯の噛み合わせを矯正して、たくさんのヤジや罵声がレース中の彼に再び飛ぶようになると良いですね。
因みに彼は、当所退院後、3月下旬に行われるレースに出場します。

●先月末に退院したスキー・アクロの女性選手が今月6日に再入院してきました。
彼女は、 2月4日にある長野県開催のフリースタイル・スキー世界選手権大会に出場する予定でした。
しかし、彼女はこの大会には出場しませんでした。
理由は、チームドクターからストップがかかったからです。
彼女自身は、この大会への出場を目指して当研究所で一生懸命トレーニングに励んでいました。
彼女は涙ながらに、「どうしても出場したい!」とチームドクターに頼みましたが、聞き入れてもらえなかったそうです。
チームドクターにしてみれば、「先のある有力な選手にここで無理をさせて故障させたくない」との気持ちからの決断だったと思います。
私は、以前当所に診察に訪れたバスケットボールの外人選手を思い出しました。
彼は、手指を骨折していました。 チームの監督は、2週間後に行われる試合に彼を何がなんでも出場させたい気持ちで一杯でした。
担当した医師は、チームの監督から「先生、2週間で治してくれ!」と無理難題を言われて、困ってしまいました。
監督にしてみれば、 「試合に勝ちたい。 勝つためには、彼の力がどうしても必要である」 という思いだったのでしょう。
そこには、目先の試合に勝利することだけにとらわれた監督個人のひとりよがりであるように思いました。
選手の将来を大切に考えておられるのか、 とても疑問でした。
企業と契約しているスポーツ選手、特に外人選手は、厳しい境遇におかれていると感じます。
ですから、そういった面から考えると、今回のスキー・アクロ選手のチームドクターのとった措置は、とても人道的だと思いました。
私は、選手を大切にする監督・コーチ・チームドクターに恵まれた選手は、とても幸せだと思います。
現在、スキー・アクロの女性選手は、世界選手権に出場できなかった無念な思いが吹っ切れた様子で、基礎トレーニングに一生懸命取り組んでいます。
トレーニングが終わって夕食後には、入院している他の選手たちと面会室で和気あいあいとトランプなどして楽しんでいます。
こんななごやかな雰囲気に心が和みます。

● 私は、今月でスポーツ医・科学研究所を退職することになりました。
長い間 “ナースセンターだより” をご覧下さってありがとうございます。
拙い点がありましたことをお許し下さい。
4月からは、新たな職場で一生懸命仕事していきたいと思っております。
スポーツ医・科学研究所のますますの発展と皆様のご健康とご活躍を心よりお祈り致します。

スポーツ医・科学研究所
ナースセンターだより1997年2月
診療部 主任看護士 安藤秀樹

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