脛骨外骨腫の症例から ナースセンターだより1993年6月
1. はじめに
当所で脛骨外骨腫切除術を受けた4例の入院中の経過について報告します。
2. 脛骨外骨腫について
良性の造骨性腫瘍である骨腫で、骨表面より外方に成長したものをいう。10歳代が半数近くを占める。男子と女子はほぼ同じ割合である。膝関節近傍の骨端部に発生が最も多い。単発性の場合は、 足部に発生例が多い。臨床像では、単発性の症例は、学童期に無痛性の腫瘤に気づくか、または数年おくれて外骨腫の表面を走る腱様組織との間に発生した滑液嚢炎のために同部に、腫脹、圧痛、熱感、運動時痛を生じ、同時に骨性腫瘤を触れることによって気づく。疼痛がなければ発見は遅れるが、 痛みが軽度でも長く続くと、膝関節の屈曲制限が出現して正座ができにくくなることがある。 治療は、単発性の症例では、大きくなって痛みが生じたり、関節の機能障害を起こすようになれば切除する。予後は、 良性であるが、 多発性の症例ではまれに軟骨肉腫が発生する。
レントゲン所見
<症例1>
患者:女性 19歳
スポーツ種目: バスケット
スポーツレベル:A(当所ナースセンターの判定基準による)
手術前の症状:膝内側部に時々拍動性の痛みあり
入院中の経過
<症例2>
患者:男性 14歳
スポーツ種目:陸上(短距離走)
スポーツレベル:D(当所ナースセンターの判定基準による)
手術前の症状:膝内側部に疼痛あり。
入院中の経過
<症例3>
患者:女性 15歳
スポーツ種目:バレーボール
スポーツレベル:D(当所ナースセンターの判定基準による)
手術前の症状:中腰になっていると歩けなくなる。時々、右膝内側に痛みがでてくる。正座ができない。
入院中の経過
<症例4>
患者:女性 20歳
スポーツ種目:陸上(円盤、砲丸投げ)
スポーツレベル:C(当所ナースセンターの判定基準による)
手術前の症状:階段昇降時、横座りで膝に痛みあり。
入院中の経過
4.考察
脛骨外骨腫の症例を平成1年度に4例経験した。
脛骨外骨腫は、スポーツ外傷・障害というよりは、生来備わっている因子から発生した疾病である。
スポーツするにおいて支障をきたすので、手術して現場復帰させるのが、当所で手術を行う目的である。
手術前の症状としては、「膝内側に痛みがある。 正座ができない」 などである。
入院中の経過は、術後2日目に、リハビリ (ベッド上Patella setting SLR を含む)が開始となる。
ROM訓練開始は、各症例ともまちまちである。 症状、筋力に応じて異なってくるようであるが、 一般的には、術後1週目から術後2週目頃ではないかと思われる。
[症例1]では、異例の早さとも言える術後3日目からROM訓練を開始しているが スポーツレベルが高く、早期にスポーツ復帰させる必要があったためである。医師からは「慎重に行うように」とコメントされている。
荷重のかけ方も、各症例ともまちまちである。全荷重は、早い症例では術後1週目、遅い症例では術後19日目である。
手術後の症状としては、痛み、腫れ、 熱感、つっぱり感などが各症例に見られる。
トレーニングを実施する際に、術後2週を経過した時点でもSLR(下肢伸展挙上)が思うようにできないといった症例があるので、 痛み、筋力との影響などを留意して経過を見ていく必要がある。
旧 スポーツ医・科学研究所
ナースセンターだより1993年6月
元 診療部 主任看護士 安藤秀樹
ナースセンターだより
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