スポ研ナースセンターだより

スポーツ活動中に発生する障害の要因とその予防に関する基礎的及び応用的調査研究





Ⅰ 研究目的

スポーツ人口の増加、スポーツ活動の多様化、さらにその技能の高度化等から、スポーツ活動中における外傷・障害は多発している。
目的の如何を問わずスポーツ外傷・障害の発生を最小限に抑えることは、競技能力の向上においても健康の維持・増進においても必要不可欠のことである。
外傷・障害の原因としては、トレーニング要因、環境要因、個体要因があげられており、これらの詳細な検討が予防対策上必要である。
本研究はスポーツ活動中に発生する外傷・障害の原因をスポーツ医・科学的見地から究明するとともに、予防対策を提言することを目的としている。

Ⅱ 研究方法

先の報告書(第1報)に見られるように第1年次は、スポーツ傷害治療を専門とする幾つかの医療機関(本研究所、関東労災病院スポーツ整形外科、名古屋大学医学部付属病院スポーツ外来)の受診カルテ、並びに幾つかの大学(名古屋大学、東京大学、中京大学、中京女子大学)の運動部学生の内外傷・障害の既往症のある者について、外傷・障害発生とその内容についてのアンケート調査および1部については個別要因と思われる条件(関節弛緩性・柔軟性、下肢のアライメント)の直接検診を実施し、スポーツ活動中に発生する外傷・障害について種目特性、並びに個々のスポーツ技能レベル等を加え原因究明を行った。

第2年次では予防対策にかかわる問題解明の手がかりとして、発育期(小学校高学年から高校生まで)の児童生徒を対象に、この時期に特発的に多いスポーツ障害を中心に、その発症要因について究明した。その理由は次の諸条件による。
成長期は小学校高学年から高校生までの最も身体発育が盛んな時期に当たり、身長の伸び、性熟が目立つ。
身長の年間発達量は、宮下によれば10歳前後で急激に増加し、14歳前後でピークを迎え、18歳でほんとど停止するが、この時期は長管骨では縦軸の伸長が起こる骨端線が存在し、関節軟骨も弱い。また筋腱付着部にも骨端核があり、骨の伸びと筋腱の伸びにアンバランスが生じやすい時期でもある。
身長の伸びのピークは女子の方が男子に比べると12年早いが、特に女子では12歳前後に初潮を迎えると、女性ホルモンの影響で体脂肪がつきやすい時期に当たる。
また成長期は、身長の伸びを初めとして年間発達量の個人差が大きいのも特徴である。
一方成長期はスポーツ活動が盛んになる時期でもあり、少年野球、少年サッカーを初めとして各種英才教育、中学校から始まる部活動が始まる。
これらのスポーツ活動は、本来は成長期の生理学的特徴をふまえた、発育を阻害しないものでなければならないが、現実は目先の結果を求めたその場限りの過度なトレーニングに終始する場合が多い。
以上述べた個体要因とトレーニング要因が関係して、成長期に特徴的な男子の野球肘、オスグッド病、女子の膝前十字靭帯損傷、膝関節障害が発生する。
以上の内今年次でオスグッド病と野球肘に焦点を絞り、オスグッド病に関しては臨床例102例と、某中学校新入部員126名について、X線検査による脛骨粗面の骨発育を基準にして、その発生時期について検討を加えた。また野球肘に関しては、某中学校野球部新入部員20名全員について肘関節X線検査を経時的に行い、骨端核の変化について検討したので、その結果をオスグット病については症例研究と発症要因の二編に、野球肘については肘関節のX線像の検討を中心にまとめ報告書とした。

スポーツ医・科学研修会
スポーツ外傷、障害のリハビリテーション
膝を中心に&下肢疾患




健康と運動、運動の高血圧症予防効果(効果的運動実践)
ポケットヘルシーブック



旧 財団法人スポーツ医・科学研究所のJournal「スポーツ医・科学」第3巻 1989年


発刊によせて
常務理事 所長 松井 秀治

スポーツ医・科学も第3巻第1号 (1989年) と巻を重ねることとなりました。

1989年 (昭和63年度) は文字通り本研究所にとっての記念すべき年でありました。 記録さるべきことが数々ありますが、事象を追って列挙すれば次の通りであります。

特筆さるべき事は6月10日研究所の竣工式典が行われ、本格的に本研究所の業務に取り組む殿堂を持ったということであります。 昭和62年9月初めに着工された研究所施設の建設工事は、62年末からの建築ブームによる人手不足等の困難を克服し4月上旬にほぼ完成を見、引き続き内部設備および機器の搬入取り付け等を行い6月10日の竣工の式典を迎えたのであります。

式典は研修室での修祓式、体育館での竣工式,、引き続いての祝賀パーティーと350名を越える参会者のもと、厳粛な内に華やかに、またスポーツ研究の場にふさわしい活気に満ちた雰囲気で進められました。 この時点で、本研究所の標語といってよい、「活力ある人づくりを求めて、今、新しいスポーツの有り様」 を生み出す医学と科学が一体となったわが国初のスポーツの総合研究機関が、名実ともに発足したのであります。

この研究所を預る者として改めて身の引き締る思いとともに責任の重大さを感得いたしました。

中2日の整理期間を置き6月13日から本研究所の対外事業である診療部のスポーツ外来、研究部のスポーツプロモーションの事業を開始いたしました。 これ等の事業は日を追って活発化し、平成元年3月末(63年度末)では、外来診療者延3,461人 (内入院者実数 124人),、スポーツプロモーション対象者278人となっています。 なおこれ以外の宿泊者を含めた施設利用者は実に延4,497人であります。
また、新しい発想による施設ということで、スポーツ関係者は勿論、行政、社会福祉事業関係者、婦人団体、教育関係者など約6,000人の見学者が来所されました。

スタッフも建設業務開始当初からの横江診療部長に加え、5月末までに15名の専任者を採用いたしました。 更に7月と10月に各1名を増員、現在は中部財界各社から出向いただいている5名を加え、23名の専任と8名の非常勤の31名であります。 スタッフの内容や業務などについては別に研究所年報を出しますのでそれを御高覧いただきたいと思います。

さて、スポーツ医・科学第3巻第1号には7編の論文を掲載いたしました。 内専任研究者の論文が3編、非常勤研究者の論文が4編であります。 掲載論文も巻号を数えるようになりまして、ようやく本研究所の独自性を持った論文になりつつあるかと考えます。

それは横江氏の論文に窺われるように、ランニング障害という問題を、ランニングフォーム、特に小さなグラウンドでのコーナー走に先づ焦点を絞り、スポーツ科学研究者の協力のもとにその障害発生の要因を究明していることであります。

また、森谷氏の論文は筋電図をスポーツ障害のみならず、一般的整形外科診断、 特に外傷性でない障害の診断への応用を示唆する重要な内容をもつものといえます。

太田氏の論文はスタッフの関係で本研究所では主要な柱としつつも、その具体的対応の遅れているスポーツ活動の健康管理への活用について、自己管理機器の開発にかかわるもので、今後の研究所の積極的健康管理事業への重要なステップを刻まれたものといえます。

福永氏、矢部氏の両者はともに筋出力にかかわる論文ですが、前者はトレンドとアントレンドの比較から筋出力形能の発揮特性を
後者は筋出力発揮に先立って見られる筋電図の抑制現象と出力の増強効果にかかわるものです。 筋力トレーニングの基礎を明らかにするとともにその応用を示唆しています。

山賀氏の論文は整形外科的診断における診断機器の有用性にかかわるもので、本研究所の重要な目的の1つである研究と現場との一体化をすすめる報告として評価されるものといえましょう。

松井は名古屋大学グループの支援を得てやり投における新しい型の投技術について三次元的分析からの究明を報告しています。

以上、各論文の要点を紹介しましたが、本研究所における研究はスポーツ現場の問題解決への基礎的, 応用的資料の提供を目標としていることを重ねて申し上げ第3巻第1号の発刊の言葉とします。









旧 財団法人スポーツ医・科学研究所のJournal「スポーツ医・科学」第4巻 No.2



発刊によせて
常務理事 所長 松井秀治

編集の関係で同時発刊となりましたが、スポーツ医科学第4巻第2号をまとめ公刊しました。

本誌は当研究所の研究誌として現在まで年1回の発刊でありましたが, 第4巻にして始めて号数を複数とすることが出来ました。
年1回の発刊にもかかわらず、敢て巻号を表示して来ましたのは今日を願ってのことであります。

本研究所の充実にともない更に季刊、隔月刊への発展を意図しています。

さて、第2号では本研究所において手がけています、体力総合診断システム研究開発の内、スポーツ選手のための研究が一応のまと
まりを見ましたので、 論文として集録いたしました。

論文は目次に示しましたようにシステム構成にかかるものと、これらシステムを構成する主要体力指標にかかわる測定と評価法に関する3つの論文の4論文を集録しました。

システム自体は勿論併せて個別指標の測定・評価等の取扱いについて各方面からの御高見を賜れば幸いでございます。

お願いを付記し第4巻第2号発刊のことばとさせてだきます。




旧 財団法人スポーツ医・科学研究所のJournal「スポーツ医・科学」第9巻





発刊によせて
常務理事 所長 松井 秀治

財団法人スポーツ医科学研究所のJournal 「スポーツ医・科学」の第9巻の発刊を見ることとなりました。 牛歩の歩みではありますが、多くの関係者の物心両面の支援と所員の弛みなき努力により、 研究所はその設置の目的を一つ一つ具体化しており、第9巻の発刊もその一つといえます。

発刊によせる最初の言葉とこのことを申し上げ、改めて本研究所の事業推進に御協力を賜っております方々に厚く御禮申し上げます。

さて第9巻も1号と2号の同時発刊となりましたので、1号にはスポーツ医学関連のオリジナル論文4編と1つの調査研究を集録いたしました。

2号にはスポーツ科学関連のオリジナル論文を5編集録いたしました。
ここでは以下に1号の目次を追って各論文および調査研究の視点について簡単に紹介いたします。

井戸田仁の論文は、本研究所診療部における診療例の多いスポーツ選手の膝関節靭帯損傷、特に前十字靭帯損傷に関するものであります。 前十字靭帯損傷はスポーツ活動を続ける上での致命的外傷であり、その治療の良否は選手達のスポーツ生活を大きく左右します。このことからその損傷の治療に関する研究は早くから見られ、近年ではスポーツ種目別の治療研究報告が公刊されています。本論文はその一つに加えられるハンドボール選手群の治療に関する知見であります。 すなわち、 研究所診療部において前十字靭帯損傷を治療した38名のハンドボール選手患者について診断(受傷状況、合併損傷)と治療 (手術治療、保存的治療) の成績と、そこでの治療についての知見をまとめたものであります。

伊良波知子、小林寛和等の論文は疲労骨折部位としては稀とされている骨盤部疲労骨折の発生要因を究明したものであります。 疲労骨折は過激な或るいは不適切なトレーニングの継続にともなって起こる骨傷害であります。 稀な対象例となった2選手はいづれも優れた成績を持つ女子マラソン 長距離選手であります。かかる症例についての発生要因の究明は傷害を未然に防止するための重要な礎石であり、本論文はその一石として評価されましょう。

伊藤宏を筆頭者とする論文は本研究所と周辺大学研究者との共同研究の成果で、激しい一過性の集中的持久性トレーニングの赤血球への影響を検討したものであります。 近年のスポーツ記録の向上や技術の高度化は必然的に質量ともに厳しいトレーニングを強要することになります。 先の疲労骨折の例にも見られるように、 その行き過ぎは人体そのものの損傷になりかねません。 本研究は赤血球というミクロな視点から一過性ではあるが過激な持久性トレーニングの安全性とそのトレーニング効果についての究明であります。

我が国においても成人病予防やその治療法の主要な内容として持久的運動の実践が提唱されてから20余年を数えます。 しかし今日、 なおその運動実践に当っての運動処方設定の為の簡易で安全の高い運動負荷テスト、またはそれに代わる全身持久力や有酸素運動レベルを測定または推定し得る方法が皆無に等しい。 川村孝等の論文はこの測定指標推定についての試みであります。 約5年間に渡る愛知県総合保健センターにおける555名(内男性325、女性230)の成人病検診の諸検査結果を踏まえ、 同じ対象の最大酸素摂取量 AT時の酸素摂取量と心拍数の運動負荷テスト三指標を要素として回帰式を作制。この回帰式から目的とする測定指標の推定を行おうとするものであります。

以上は、私が旧スポーツ医・科学研究所在勤中に発行されていた、手元に残っていた書物です。

旧 スポーツ医・科学研究所
元 診療部 主任看護師 安藤秀樹

投稿:2024年4月28日

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