スポ研ナースセンターだより


スポーツ医・科学研究所での代表的な手術は、前十字靭帯再建手術です。

前十字靭帯再建手術と一口に言っても、手術を行う医師は、大変なストレスを強いられます。
医師は、選手に最善の手術を行いたいという気持ちがありますので、そのストレスたるや相当なものです。

腸脛靱帯で作製した靱帯を大腿骨と脛骨に通すために開ける穴の位置一つを決めるにも、けっして妥協を許しません。ですから、手術が終われば精神的にも肉体的にもくたくたに疲れてしまいます。

某大学の医局から定期的にお手伝いに駆けつけて下さるS医師が、久しぶりに当所で前十字靱帯再建手術に立ち会われた日は、随分お疲れの様子でした。昼食後、外来が始まる前の束の間のことだったんですが、 診察室の椅子にもたれて、コクンコクンとうたた寝をしてしまわれました。

そんなS医師に私は 「井戸田仁先生は、水曜日と金曜日にも前十字靱帯の再建手術を行うのですよ」とお話したら、「えぇ? 信じらない!」とびっくりされました。それほど前十字靱帯再建手術を行うということは執刀医にとって大変なことなんです。

井戸田仁先生のお仕事のおおまかな内容は、(月)、(水)、(金)の午前に手術、午後は外来診療、(火)、 第1(土)、 第3(土)の午後には外来診療です。

その他に入院患者の診察と包交処置、ならびにたくさんの診断書と入院経過録の記載などの仕事があります。

私は下記の点で問題を感じます。

一人の医師の仕事の負担があまりにも大きすぎるという点です。
井戸田仁先生は、臨床だけでも一杯一杯に仕事している上にさらに研究活動も強いられています。これは精神面において想像以上に大きな負担になっていると思います。

井戸田仁先生の研究活動は、勤務時間外で行っており、大幸財団、関節鏡学会、サッカー講習会などの学会原稿、中・高校生のスポーツ外傷・障害の予防に関するハンドブックの作成、阿久比高校の考察などの仕事は、スポーツ医・科学研究所に寝泊まりしてなさっています。夜明け近くまで働かれて、 睡眠時間もほとんどとらないまま、その日の午前に前十字靱帯再建手術を、午後には外来診療を行っておられます。

毎年毎年このようなことの繰り返しです。当所に研修に訪れる他院の先生方の誰もが、「井戸田仁医師はすごいな。よくやるな。タフだな。」と感服しておられます。

私は、「このままの状態がいつまでも続くはずはない」とはっきり思います。今、井戸田仁先生に倒られたら、スポーツ医・科学研究所の将来はないと言っても過言ではないと思います。

事務局は診療部に「もっ外来患者を増やして収益を増やして欲しい。研究論文をいついつまでに提出して欲しい」と要請してきます。

一人の医師に何から何まで請け負わせるのは無茶な話です。事務局は、今、「優秀な医師にずっと当所で働いていただくためには、どうしたら良いのか」を真剣に考えるべきです。

真摯な気持ちで働いて下さる医師を増員して井戸田仁先生の仕事の負担を軽減するべきです。

来年の4月にK医師が当所に正職員として迎えられる予定になっていますが、これは定かではありません。 ぜひ当研究所に迎えていただきたいと願うばかりです。

スポーツ医・科学研究所
ナースセンターだより1996年11月
診療部 主任看護士 安藤秀樹

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