スポ研ナースセンターだより


● 昨年11月末に腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けたラグビーのK選手が、本年1月18日に行われた第49回全国社会人ラグビー大会決勝トーナメント準々決勝に出場しました。

日本一奪回を目指してK選手の所属するTチームは大健闘しましたが、惜しくも後半に相手のリードを許して逆転負けしてしまいました。

新聞紙面には、「ベストメンバーも強力FW押されっ放し。 出直しだ。 Tチーム!」 などと厳しく書き立てられました。

しかしK選手の怪我の事情を知る私にとっては、また他にも鎖骨骨折していた有力選手がいたことを考えると、Tチームはベストメンバーといえども決して万全な状態ではなかったと思います。

K選手は、昨年11月に当研究所に1カ月間、寝たきりの入院生活を送っていました。

理学療法士の先生方が、ストレッチャーに彼を乗せて風呂場まで運んでいって、彼の髪の毛を洗ってあげたり、身体を洗ってあげたりしました。

その彼が、12月には手術を受けて歩けるようになりました。

以降一生懸命にリハビリに取り組まれて、今回のこの大会に出場しました。

試合当日、担当医も私も仕事していましたが、「K選手、 大丈夫かな?」と心配でした。

手術してわずか2カ月で、 全日本の大会にいきなり出場するのですから、心配にもなりますよね。

ラグビーは、 全力疾走したり、倒されたり、激しくぶつかりあったりする苛酷なスポーツです。

腰にかかる負担は、相当なものだと思います。

病みあがりの彼が、相手選手達に激しくタックルしている姿は、 TV観戦している者にとっては、信じられない光景でした。

Tチームは、結果として敗戦しましたが、彼が寝たきりの入院生活の中で語っていた言葉、「1月に復帰したい」が実現したことは、素晴らしいことでした。

「強い意志があれば、どん底にあっても、這いあがることができる。何事もけっして諦めてはいけない」と改めて彼から学ばせていたいだきました。

スポーツに人々が感動したり、勇気づけられたりするのは、 彼のようなスポーツ選手がいるからなのですね。

● あるラグビー選手が昨年10月末から当研究所に腰椎椎間板ヘルニアで入院していました。
彼はK選手と同じチームに所属している選手です。
彼は牽引治療を2カ月間続けましたが、 症状に変化はありませんでした。
それでC病院で神経根ブロックを2回受けました。
しかし、 それでも思ったほどに効果は現れませんでした。
C病院の医師から「あと半年すれば、ヘルニアが縮小してくる可能性が高い。しかし筋力の低下を考慮して、痛みが続けば手術も視野に入れる。超早期復帰の方針でチームと本人が納得の上であれば手術の適応がある」とのご返事をいただきました。
彼は、1カ月間寝たきりの入院生活を送っていたK選手が手術後に歩いている姿を見ました。
彼はその姿に刺激されたのでしょうか。
「手術した方が良いのかなぁ」という気持ちになったようです。

ある日、彼は当所の担当医師から「手術しなくても治る可能性は十分にあります。保存療法は劇的に効果の現れるものではありません。あと3〜4週間経過を見ても良いと思いますが、どうしても手術したいのであれば、手術の方向で考えても良いと思います」と説明を受けました。

彼は、その説明を聞いて「手術して欲しい」と願い出ました。
担当医師は、「手術すれば、レクリエーションレベルでの復帰は十分に可能です。 しかし、あなたのようなトップレベルでの復帰の確率は、5割ぐらいだと思います。それでも良いですか」と念を押されました。
彼は「それでも構いません」と返事しました。
それで、チームの監督とも相談したところ、手術することに決めました。
彼は1月17日に当所退院後、C病院に入院して手術を受けました。
彼もK選手のようにラグビーに復帰できることを祈りたいと思います。

● スキー・アクロの女性選手が、 昨年12月23日にスキー練習中に左膝を痛めました。
彼女は国際レベルの選手で、将来を期待される選手です。
東京の某病院の紹介で、本年1月10日に当研究所にリハビリ入院してきました。
入院当日に当所の医師が彼女の左膝を診察したところ、前十字靱帯損傷の疑いがありました。
それで確定診断をつけるために1月17日にMRI検査を行いました。
検査の結果、前十字靭帯は損傷していない。 内側側副靭帯の単独損傷であることが判明しました。
彼女は、2月4日に行われるフリースタイル・スキー世界選手権大会に出場することを強く希望していました。
もし前十字靭帯が損傷していたら、その大会への出場は断念せざるを得なかったかも知れません。
だから本当に良かったです。
これで治療の目処がたちましたので、医師は彼女に「2月4日の大会を目指してどんどんトレーニングしてゆきましょう。大会まで2週間しかありませんが、その間にスキー・アクロの動きを獲得して、筋力をつけましょう」とお話されました。
彼女は、これではっきりした目標をもつことができたので、以後一生懸命にトレーニングに励みました。
ただし、復帰に向けてのトレーニングは並大抵ではありません。
と言いますのは、彼女はケガをしてから左膝をずっと安静にしていたために筋力がかなり低下していて(太ももの太さが左右で3cmもの差ができていました)、それを大会までのわずか2週間で左右ともバランスよく筋力をつけなければいけないからです。
スポーツ選手は、普通の人では無理だと思われることも、強い意志で成し遂げようと努力されますから驚きです。

● 昨年1月に行われた箱根駅伝の復路6区を走った中央大学のK選手が、 昨年の9月と10月に足のケガ (立方骨、 第5中足骨開放骨折)で、当所に入院していました。
10月の退院間近にやっとジョグできるようになった彼が、わずか2カ月間のトレーニングで、 本年1月3日に行われた箱根駅伝に出場しました。
彼は復路6区を走り、区間11位でしたが、その区間の総合順位2位をキープしました。
当所入院中は、出場できるか否かさえ危ぶまれていただけに、この彼の成績は実に立派です。
しかし、ある陸上競技の月刊誌には、彼のことを次のように論評していました。
「3年連続6区のK選手は、中央大学の追撃の足がかりと期待されたが元気なく、区間11位に沈んだ」と。
この論評は、彼のケガの事情を知らない方が書かれたのだと思います。
彼は、昨年7月19日に交通事故でケガしてから、実に3カ月もの間、 全く走っていませんでした。
練習しなければ競技成績は落ちます。
特に長距離走選手は、顕著にそうなります。
「走力は相当に落ちているだろう」と思っていた彼が、そんな心配とは裏腹に区間11位で走り抜いたことは私には大きな驚きでした。
結果として、中央大学は昨年飾った総合優勝こそできませんでしたが、彼のケガを知る私には、総合4位は立派な成績でした。
K選手!知らない間にいつそんなに大きな力をつけたのですか?
ともかく復帰できましたこと、誠におめでとうございます。

スポーツ医・科学研究所
ナースセンターだより1997年2月
診療部 主任看護士 安藤秀樹

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