スポ研ナースセンターだより


● 有力実業団のラグビー選手が、来月出場予定であった全国大会を目前にして、 練習中に膝の前十字靱帯を損傷してしまいました。
彼は高校時代に同じ膝の後十字靱帯も損傷していました。
こちらは特別に治療を行わないで、今日までラグビー選手として一生懸命にラグビーに取り組んできました。
今回の怪我で、彼の膝は大切な2本の靱帯を損傷してしまい、ぐらぐらになってしまいました。
今後ラグビーを続けるのでしたら、もちろん前十字靭帯の再建手術をするべきです。
しかし、今手術したら、とても来月に行われる試合には出場できません。
彼は、「たとえ前十字靭帯が切れていても、やれるところまでやりたい」 と語っていました。
おそらく全国大会決勝進出の場合には、テーピングをガチガチに巻いて出場することになると思います。

● サッカーの女性選手が、2年前に前十字靭帯を損傷して、東京の某病院で人工靱帯による再建手術を受けました。
しかし昨年の6月頃から膝の動揺性が増してきて、昨年の10月には練習が出来なくなりました。
そこで、トレーナの勧めもあって、当研究所で今月に再々建手術を受けることになりました。
再々建手術で厄介なのは、再建で使用した人工靭帯を抜去するのが非常に難しいことです。
今回、他病院からも医師が応援に駆けつけて下さって、何とかスピーディに人工靱帯を抜去することができました。
抜去した後には、膝の内側にある筋膜を2本取り出してきて、それと人工靱帯を重ねて代用の前十字靱帯として再々建手術が行われました。
これでボールを蹴るのも恐くて練習できないでいた彼女が、 再び好きなサッカーができるようになるなら、医者冥利につきますね。

● 今年の1月1日に行われた高校ラグビー全国大会三回戦に出場した選手が、今月19日に当所で膝の前十字靱帯再建手術を受けました。
彼は昨年の4月1日に受傷し、しばらくは膝の装具をつけながら練習していましたが、 昨年の9月からは装具を一切つけないで試合に復帰しました。 無理していたこともありましたが、幸いに全国大会出場の際は、膝がガクッとはずれることはなかったそうです。
今回、全国大会も終わり一段落ついたので、 九州からはるばる当研究所に入院してきました。
彼は悲しい境遇にあります。それは、彼の父親が2年前に病気で他界されたのです。
しかし彼は現在、ラグビーで大活躍していますし、しかも彼の母親と姉が父親以上に頑張って仕事をして生活を支えています。
家族が皆、力を合わせて頑張っておられる様子は見ていて頭が下がるばかりです。

● 昨年の10月に人工靱帯と腸脛靱帯を用いて前十字靭帯の再建手術をしたフェンシングの選手が、3月のアトランタオリンピックの選考会に間に合うように、いよいよ実践トレーニングを開始しました。
鏡の前で剣を持って、フェンシングの型のトレーニングをしていました。
やはりオリンピック候補の選手だけあって、きびきびした動きは見事でした。
本人は、 「まだ脚の動きが腕の動きについてこない」と言っていましたが、私は「これなら何とかいけるのではないか」と感じました。リハビリの先生の熱心な指導の賜物だと思います。
来月10日に当所を退院し、合宿に参加して、3月にはヨーロッパを転戦。
そして、いよいよオリンピックです。アトランタオリンピック観戦に一つ楽しみが増えそうです。 選考会にはくれぐれも体調を崩さない望んで欲しいと思います。

● 競輪選手を目指していた自転車選手が、ある日交通事故に遭いました。
大腿に血腫がたまって、某病院で血腫摘出手術を受けました。
血腫摘出後、大腿の筋肉が痩せ、膝の動きが悪くなりました。
そこで、筋力をつけて膝の動きを良くするために当所に今月入院してきました。
彼にはとても悔しい思いがありました。
それは、交通事故の1週間後に競輪学校の試験があったのです。
彼は誰からも合格すると、言われていました。
ショックはとても大きく、眠剤なしでは眠れない夜が続きました。
最近やっと前向きに考えることができるようになりました。
それでも、友人が合格しているであろう競輪学校の合格発表日が近づいてくると、「交通事故にさえ遭っていなければ、今頃は自分も・・・」 と思われるのか、「合格発表日が恐い」とか「眠剤が欲しい」と言うなど、ショックが隠しきれない様子でした。
人は、それを見て、「精神的に弱い人間だ」 と思う人がいるかも知れませんが、 私自身は、もしそのような状況におかれたらきっと彼と同じ心境になると思います。
思わぬ不慮の事故で、人生を台無しにすることもあると思います。
しかし彼はまだ若いです。
これからの努力次第で十分に取り返しがつくと思います。
今は、つらくて悲しいかも知れませんが、これを乗り越えればきっと精神的にたくましくなって、将来には輝かしい選手になると思います。

● 新潟県でスキーのインストラクターをしている選手が、 昨年4月に、 スキー滑走中に脛骨(膝のすぐ下の下腿骨)を粉砕骨折し、しかも膝の前十字靱帯と半月板を損傷するという大怪我をしました。
怪我をしてから1週間後に、某病院で骨折箇所の骨を接合する手術を受けました。
今回、当所には、 膝周囲の筋力をつける目的と、正しいテーピングの方法、正しいトレーニング方法を学ぶ目的で入院してきました。
彼の怪我は、転倒ではなく滑っている最中に起こりました。
ボキボキと音がして、「やってしまった」と思ったそうです。
「スキーのインストラクターとして、いつも生徒たちに、怪我をしないスキ一の転倒の仕方などを指導しているのに、まさか自分が怪我をしてしまうなんて、 誠に恥ずかしいことです」 と言っておられました。
彼の粉砕骨折のレントゲン写真を見ました。
骨がこなごなになっていました。
『こんなにひどい骨折を、一体どうしたら治すことができるのだろうか?』 と思いました。プレートでガチガチに固定してありました。
医師は、「スキーをしっかりおやりになるのでしたら、プレートを抜去する手術の頃に前十字靱帯再建手術をした方が良い」と手術を勧めました。
彼は、「骨折した下腿骨に靭帯を通す穴を開けることになる再建手術は行わない方が良い」と思っていました。
半ば手術を諦めていただけに、 今後どうするのかは、自分のスポーツレベルとじっくり相談して決められるようです。

スポーツ医・科学研究所
ナースセンターだより1996年1月
診療部 主任看護士 安藤秀樹

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