尺骨肘頭疲労骨折で手術を受けた柔道の選手
1.はじめに
尺骨肘頭疲労骨折で手術を受けた柔道選手の入院中の経過について紹介します。
2.尺骨肘頭骨折および尺骨肘頭疲労骨折について
肘関節を屈曲して肘の後方を強打したり、槍投げなどにより上腕三頭筋が急激に収縮したときに尺骨肘頭に骨折が発生する。徐々に発症して起こるものが尺骨肘頭疲労骨折である。肘関節の伸展力の低下または不能、ROM制限、運動痛、圧痛、腫れなどの症状を呈する。
3.症例報告
男性:25才
スポーツ種目:柔道
スポーツレベル:B(当所ナースセンター判定基準による)
職業:高校体育教諭
スポーツ歴:小学、中学、高校、大学、現在に至るまで柔道
競技成績歴:西ドイツ国際柔道大会 第2位
全日本柔道強化選手
傷病名:左尺骨肘頭疲労骨折、左尺骨茎状突起骨折(陳旧性)
手術名:左尺骨偽関節手術(平成4年10月12日)
入院時所見:左腕に力を入れると左肘が痛む。
左肘ROM:0° 5° 135°<伸展制限あり>
右肘ROM:8° 0° 141°
入院までの経過:
高校1年の頃から、左肘を伸ばそうとする時に、左肘の内側〜肘頭にかけて痛みがあった。しかし疼痛を我慢して練習を続けていた。大学2年の頃に左肘の疼痛が増強し、大学内の保健センターで、レントゲン撮影、左尺骨肘頭に骨折線があるのがわかった。その後は疼痛が和らいだので放置した。平成4年7月初旬、五大都市大会において、背負い投げで130キロの相手選手を担ぎ上げた時に左肘を外反した。その後、左肘肘頭から内側にかけて疼痛が増強した。3週間経過しても痛みが消失しなかったため、平成4年7月下旬、当所受診。左尺骨肘頭疲労骨折と診断される。手術を勧められて、平成4年10月、当所入院となる。
既往歴:
小学生の頃、左手関節骨折(尺骨茎状突起骨折)。ギプス固定を受ける。現在手関節背屈60°以上で負荷をかけると疼痛あり。
22才、急性虫垂炎、手術にて治癒。
入院時特記事項:
最近蕁麻疹がよくでる(原因不明)。皮膚科で処方された薬を持参している。
鼻閉、鼻汁の風邪症状あり。
<手術の内容>
省略
<入院中の経過>
省略
<入院中のリハビリ>
エアロバイク、レッグエクステンション、レッグカール、レッグプレス、アブドミナル、バックエクステンション、リストカール(右腕)、チェストプレス(右腕)など患部外トレーニングが中心。
<退院後の経過>
省略
<入院中の問題と対策および結果>
省略
5.考察
患者は律儀な性格の人であった。主治医から、術後しばらくの期間は、患肢を挙上しているようにと言われたので、忠実にそれを守っていた。
手術後に初めて彼がリハビリに出かけた時、理学療法士の先生は、患肢を上げながらトレーニング室に現れた彼の姿を見て驚いた。本人に理由を聞くと、「主治医から挙上しているようにと言われたので」ということだった。理学療法士の先生は、「トレーニング室まできてもそこまでしないといけないのか?」と疑問に思い、主治医に尋ねた。主治医は「そこまでするのは大変だから、リハビリの時だけは、三角巾をして、患肢をおろしてもいい」と話しをされた。私も理学療法士の先生も実直な彼の人柄に微笑ましさを感じた。
患者は、手術が終わってから、点滴スタンドを利用して患肢を挙上していた。しかし点滴スタンドは頑丈な作りでないため、不安定で、患者自身が自主的に挙上しなければいけないことが多く、かなり苦痛の様子であった。リハビリ以外、常に患肢を挙上していることはかなりきつい。もっと楽に挙上できる良い工夫はないものだろうか。
今後は彼のスポーツ復帰を楽しみに待ちたい。
旧 (財)スポーツ医・科学研究所
ナースセンターだより
元 診療部 主任看護士 安藤秀樹
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